March 6, 2014
Myriad事件及びMayo事件の最高裁判決*の適用範囲をめぐる数ヶ月の思索を経て、USPTOは先日、米国特許法101条に基づき特許適格性を審査する際の新たな審査基準ガイドライン(以下:「ガイドライン」)を公表しました。(*Association for Molecular Pathology v. Myriad Genetics, Inc. (Myriad) and Mayo Collaborative Services v. Prometheus Laboratories, Inc. (Mayo)) このガイドラインは、Myriad事件最高裁判決日である2013年6月13日に発行されたメモランダムに取って代わるものです。ガイドラインには、単離した自然産物の特許適格性について、待ち望まれていたUSPTOの明確な見解を試みており、また核酸以外を対象とするクレームにMyriad事件判決を適用することへの説明をしています。 USPTOはMyriad事件について、「同事件の最終判決は、核酸を対象とするクレームに限られていたものの、一方ではChakrabarty事件に基づいて自然産物を記載したクレーム若しくはそれに関するクレームの著しく異なる点を審査すべきだとする注意喚起にもなっている」と述べています。(ガイドライン1参照) (Diamond v. Chakrabarty, 447 U.S. 303 (1980) 引用)
1. 審査官が特許適格性判断に用いる「Three-Part Test」
ガイドラインには、特許適格性を判断する際、審査官はThree-Part Testに従うよう明記されています。ステップ1では、クレームが4つの法定分類(プロセス、機械、製造物、物質)のいずれかに該当しているかを判断します。該当していればステップ2に進み、クレームが1つ以上の司法上除外事項、例えば、抽象的概念や自然法則/自然原理、また自然現象や自然産物などを記載しているか、或いはそれに関連したクレームか否かを判断します。クレームは全体として司法上除外事項を記載している、或いはそれに関連したクレームだと判断した場合、論争の的となりえる、ステップ3に進みます。ここで審査官が判断しなければならないのはクレーム「全体」が司法上除外事項に該当するものと比較して「著しく異なる」のか否かという点です。(ガイドライン2参照) ステップ3の要件を満たすと判断されれば、そのクレームは米国特許法101条に基づき特許適格であると見なされます。一方で、該当クレームが「著しく異なる」レベルには至らないと判断されると、特許適格性は否定されます。
2. クレームが「著しく異なる」か否かを分析する方法
ガイドラインには、審査官へのインストラクションとして、クレームが司法上除外項目に該当するものと比較して「著しく異なる」か否かを判断するため、具体例や仮定7件が15ページ程度に渡り示されています。ガイドラインによると、「著しい違い」は、複数の方法で立証することが可能とのことです。例えば、「(1)司法上除外項目を実用的且つ実質的に応用する要素や手段がクレームに含まれている;また/若しくは(2)自然に存在するものと比較して著しく異なると証明できる特性や手段がクレームに含まれている。」などを提示することです。(ガイドライン3-4(強調は追加))これには次のような疑問が生まれます。:司法上除外項目を「実用的に応用する」と判断される要素や手段とは何か、そのような実用的応用が「重要」か否かの判断を如何にして審査官が下すのか、また、「著しく異なる」という文言の意味をどう捉えて判断するのか。
A. 特許適格性要件
これらの疑問に審査官が応じられるように、USPTOは箇条書きで特許適格性(「著しい違い」があるとする事実の認定)及び特許不適格性(「著しい違い」がないとする事実の認定)をそれぞれ6つずつ要因として記載しています。また、審査官に対する忠告として、「結論を出す前に関連する要因及び証拠の全てを入念に検討し」また、「関連要因全体」のバランスをとりながら審査するよう呼びかけています。(ガイドライン 4-5) 全ての要因が全てのクレームに関係するということはなく、今後裁判の判決が下り次第、追加要因が発生する可能性もあると明記しています。
特許適格である要因とは、例えば、他者が司法上除外項目を使用するのを実質的に締め出せないように、クレーム請求範囲を縮小する要素や工程がクレームに記載されている場合や、司法上除外項目を記載し、応用若しくは使用するより、それ以上の要素や工程がクレームに記載されている場合です。
特許不適格である要因とは、例えば、極めて一般性が高く、司法上除外項目における実用的応用の全てが実質的に包含されている要素や工程がクレームに記載されている場合や、その関連技術分野でよく理解されており、単に慣習に過ぎない若しくは日常的である要素や工程がクレームに記載されている場合です。
重要なことに、これらの特許適格要因について懸念すべきは、より一般的な表現で書かれており、更に詳細な説明が必要となるという点です。例えば、ガイドラインにある、自然産物に関係する要因a)を取上げてみましょう。要因a)によると、「著しい違い」は、プロダクト・クレームがはじめから自然産物であると思われますが、更に検討すると、非自然的なものであり、構造が自然産物と著しく異なることで判断されます(ガイドライン4)。 しかしながら、要因 a)には、「著しい違い」が何を意味するのか明確な説明がありません。同様に、自然法則/自然現象に記載されている要素や工程に関する要因 j)では、その関連技術分野でよく理解されており、単に慣習に過ぎない若しくは日常的である要素や工程である場合、特許不適格とするよう審査官に指示しています。(ガイドライン5)しかし要因 j)についても、よく理解されており、単に慣習に過ぎない若しくは日常的な要素を判断する要因についての説明がここでは見当たりません。クレームのある限定事項が要件を満たしているか決定する際、異なる意見で溢れてしまうのでは、と思われます。
B. 特許要件を成立させるクレーム例
しかしながら、それら特許適格要件の解説は、ガイドラインの大部分を割いて、例などの仮定を用いて解説することで行われています。例えば、例Aでは以下2つのクレームを提示し、自然産物の除外事項について述べています。(ガイドライン5)
Claim 1: A stable energy-generating plasmid, which provides hydrocarbon degradative pathway.
Claim 2: A bacterium from the genus Pseudomonas containing therein at least two stable energy-generating plasmids, each of said plasmids providing a separate hydrocarbon degradative pathway.
(ガイドライン5) この場合、クレーム1は、クレーム全体が自然に存在するものと比較して著しく異ならないため、特許適格対象の分析審査でステップ3の要件を満たしていません。また、クレームのプラズミドと自然に発生するプラズミドの間には構造的差異がなく、それ故クレームのプラズミドは自然に存在するものと比較して著しく異ならないとしています。従って、クレーム1は特許不適格と判断されます。一方で、自然に発生する2つのプラスミドを含むバクテリアを記載するクレーム2は、要因 a)が示すように、自然に発生するバクテリアと比較して、その構造的差異若しくは機能的差異によって、該バクテリアが著しく異なるとの理由から、ステップ3を満たしているとしています。(ガイドライン5-6) このように、例Aでは、特許適格となる著しい差異とは、構造的若しくは機能的差異のことを意味するという「自然産物」の除外事項についてある一定のガイダンスが示されています。
同じように、例Gは、要因 f)及びj)を明確にする上で役立つとされる、「その関連技術分野でよく理解されており、単に慣習に過ぎない若しくは日常的である要素」か否かについてガイダンスを示す意図があります。例Gが記載しているのは、自然原理に関する3つのクレームです:
Claim 1. A method for treating a mood disorder . . . , comprising: exposing the patient to sunlight . . . .
Claim 2. A method for treating a mood disorder . . . , comprising: exposing a patient to a synthetic source of white light . . . .
Claim 3. A method for treating a mood disorder . . . , comprising: providing a light source that emits white light; filtering the ultra-violet (UV) rays from the white light; and positioning the patient adjacent to the light source at a distance between 30-60 cm for a predetermined period ranging from 30-60 minutes . . . .
(ガイドライン 15) クレーム1及びクレーム2が記載する、太陽光に患者を照射させる手段と人工の白色光に患者を照射させる手段は、要因 f)及びj)が示すように、「よく理解されており、単に慣習に過ぎない若しくは日常的」であるとし、ステップ3に要求される特許適格対象の分析に関する要件を満たしていないとしています。従って、クレーム1と2は特許適格ではありません。しかしながら、クレーム3は、フィルターを通した光源からクレームに記載した距離の位置にクレームに記載した時間の間、患者を配置することは、よく理解されておらず、単なる慣習ではない若しくは非日常的であるため、ステップ3を満たしています。従って、クレーム3は特許適格であると見なされます。(ガイドライン 15-17) このように、例Gでは、「自然法則」の除外事項、そして特に、ある特定の要素が「よく理解されており、単に慣習に過ぎない若しくは日常的」か否かを判断する際の方法に関して一定のガイダンスが示されています。
3. 結論
このガイドラインは、USPTOへの出願業務に携わる特許実務者にとって、自然産物、自然法則、また自然現象に関するクレームの特許適格性についてをクライアントに助言するツールになります。しかしながら、法をめぐる裁判所の見解とUSPTOのガイドラインが合致しているかどうか、或いは、USPTOは今後の判例に応じた後続のガイドラインの発行を強いられるのかは現時点で不明です。
注目すべきは、Myriad社が提訴しているcDNA、プライマー対、BRCA1/2 塩基変異の検出方法に関するクレームをめぐる訴訟や、Counsyl社及びQuest Diagnostics社が多くのMyriad社特許を無効とする確認訴訟と同特許への非侵害を求めている訴訟の結末でしょう。その他関連する巡回控訴裁判所事件についても今年中に判決が出る予定です。その間にも、USPTOは自然産物や自然法則に関するクレームへの対処を進めていくことが予想されます。そして、価値ある発明保護のため、効率的に低コストで、現実的にクライアントに提供できるような積極的な戦略が導入されるものと思われます。
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