December 14, 2012
By M. Paul Barker; Anthony C. Tridico, Ph.D.
2012年11月30日、米国下院司法委員長のラマー・スミス議員(共和党、テキサス)は、リーヒ・スミス米国発明法(AIA)および米国特許法(Title 35 of the United States Code)を修正するH.R. 6621修正法案を下院に提出しました。今回の修正法案では、誤記の訂正の他にAIAや米国特許法その他の規則についての重要な変更が提案されています。本号では、当事者系手続の申請時期に影響のある変更、GATTウルグアイラウンド協定の施行以前の出願における特許期間の変更、また、特許調整期間(PTA)に関する修正などいくつかの重要な変更点について取り上げます。
2012年12月18日、若干の修正を加えたH.R. 6621修正法案がアメリカ合衆国下院にて可決されました。下記は今回の修正法案に関連する事項です。現在、本修正法案は上院に移行され、審議が待たれています。
当事者系手続で生じる「空白期間」を解消
AIAには、二つの新たな異議申立手続きとして、特許付与後レビュー(PGR)と当事者系レビュー(IPR)が設けられています。現行の規則では、PGRとIPR手続の同時係属を回避するため、特許発行日から9ヶ月を経過せずに申請されたIPRは除外するとの規則が設けられています。一方PGRの申請は、特許発行日から9ヶ月間のみ可能となります。しかし、この規則は改正前の特許に基づき異議を申立てる者にとっては、PGR、IPRとも9ヶ月間は申請不可能な、9ヶ月の 「空白期間」を生み出すことになっていました (2013年3月16日より有効の先願主義制度は改正前の特許には適用されません)。実際に、AIAの現在の構造では、改正前の特許に基づくPGR手続が妨げられており、且つ、IPRの申請者には、改正前の特許が付与されてから9ヶ月間待機しなければならない期間が生じています。今回のH.R. 6621修正法案第1条(d)では、改正前の特許には、IPRの申請 (米国特許法311条 (c)項) に9ヶ月の待機期間は必要ではないとする規定がAIAに設けられることとなり、「空白期間」が解消されています。
また、現行の規則では、原特許発行日から9ヶ月経過した後、再発行特許のクレームは原特許のクレームと同一或いは狭くなる場合、再発行のクレームに基づくPGR手続を禁ずる規則が規定されていましたが(米国特許法325条(f))、今回のH.R. 6621修正法案では、その規則は削除され、それらのクレームについては、PGR手続に従うこととなっています。
係属中のPre-GATT出願に対する特許期間が短縮に
当初提出されたH.R. 6621修正法案では、本修正法案の成立後1年を経過しても米国特許商標庁に係属している、1995年6月8日以前の出願 (pre-GATT) に対する制限が厳格化されていました。1994年、米国は1995年6月8日同日または、それ以降に出願された特許の特許期間をGATT(関税および貿易に関する一般協定)に基づき20年間とするウルグアイ・ラウンド協定を施行しました。現行の規則により、Pre-GATT特許と特許出願に有効な特許期間は、最も早い出願日より20年間(GATT規則)または特許発行から17年間(従来の米国規則)とされています。当初の修正法案であるH.R. 6621修正法案第1条(m)では、本修正法案の成立後1年を経過しても係属している出願の特許期間を最も早い出願日より20年間にするとしていましたが、可決された修正法案では、本規則は削除され、USPTOで係属中のPre-GATT出願に記名がある発明者や譲受人についての報告書を作成するという規則に変更されています。
PTA規則に関する修正
現行の米国特許法第154条(b)(1)(B)では、「米国での実際の出願日」から3年以上係属している出願があるとき、場合によっては特許期間の延長が設けられています。今回のH.R.6621修正法案第1条 (h)(1)では、その開始日が変更されており、米国特許法第111条(a)に基づく米国での実際の出願日、或いは、国際出願の場合には、371条に基づく米国国内段階の開始日となっています。
H.R. 6621修正法案第1条(h)(2) では、米国特許商標庁(PTO)がPTAの決定を通知するタイミングについても変更されています。具体的には、決定通知を特許許可通知と共に通達するのではなく、特許発行までに通達するとしています。
また、H.R. 6621修正法案第1条 (h)(3)のもとでは、バージニア州東部地区連邦地方裁判所への申立は、PTAの再検討を求め、それに対して下された長官の決定に不服申立をする際には、排他的救済となります。また、この場合の申立期間についても、現行の規則である特許付与後180日後から、長官の決定より180日以内に変更されています。
代理人のアドバイスに関するAIA規則施行日についての対処
現行の規則のもとでは、故意侵害や侵害誘発の意図を立証する際、代理人から特許侵害についてのアドバイスが得られなかったという当事者側の過失を裁判にて使用することはできません(米国特許法298条)。H.R. 6621修正法案第1条(a)では、AIAの施行日同日(2011年9月16日)、若しくは施行後に開始された全ての民事裁判に該規則が適用されるとし、また、該規則の適用は、AIA施行日同日若しくは施行日後に発行された特許に限らないとしています。
真の発明者決定手続きおよびインターフェアレンス手続に関する修正
H.R. 6621修正法案第1条(k)では、真の発明者決定手続を開始する請願書の提出時期が変更されており、「早期出願」という用語に対しても定義付けがされています。さらに、本修正法案には、PTOの管轄や、2012年9月15日以降に開始されたインターフェアレンス申立手続の取扱いに関しても明示されています。明確に言うと、このようなインターフェアレンス手続は、特許審判部および連邦巡回控訴裁判所を統括している改正前の特許法規則に従うことになります(米国特許法第6条、第141条、および28 U.S.C. 1295条(a)(4)(A))。
出願人に関する規則の修正
H.R. 6621修正法案第1条(f)では、出願人は、現行の規則にある、事前のコンプライアンスに基づく許可通知発行の調整を行うよりも、特許発行手数料を支払う前に米国特許法の定める宣誓書または宣言書(oath or declaration)規則に準拠しなければならないとしています。また、H.R. 6621修正法案第1条(i)では、特許法373条の廃止が提案されています。同条は、米国を指定した国際出願で、発明者以外の者など111条に基づき米国特許出願を行う資格のない者により出願が行われた場合、PTOはその出願を受諾しないとするものです。
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